正常な皮膚が1ミリもない難病「魚鱗癬」に痛む我が子、若き母はただ「なぜ私を母親に選んだの!」と自分を責めるしかなかった
難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(12)
◆頑張る先に何が見える
私は普通とは反対の言葉を、心の中で陽(息子の名前)に投げかけた。
もう、頑張らなくていいよ。
痛々しい姿を見ることが辛い。
実際に陽がどれほど、痛いのか、辛いのか、苦しいのか。
わからない。でも、
「母ちゃん、痛いよ」と言っているようで・・・。
涙を流し、陽を見つめて立ち尽くしている私に、看護士さんがそっと肩に手をのせた。
そしてまた、私は声を押し殺して泣いた。
しばらくして別室に移り、先生から話を聞くことになった。
内容は夫から聞いた話とほとんど変わらない。
質問はありますか ? と聞かれ、
「命は・・・」と言葉をつまらせたところで、
先生は冷静にゆっくりと答えた。
「まだ、わかりません」
「いま、危険な状態であるのは確実です」
・・・
なら、辛い想いを続けさせる前に、楽にしてあげれば・・・。
魚鱗癬(ぎょりんせん)という病気の種類の中でも、最重度の道化師様魚鱗癬。医学の進歩により、この病気も、生存できる可能性は以前より高くなったとのこと。
でも完治することはない。
全身の皮膚は、正常な皮膚が1ミリもない。
その赤い目で、世の中を見ることができるの?
その開ききった口で、食べたり喋ったりできるの?
耳が見当たらないけど、音は聞こえるの?
グローブみたいな手で、物はつかめるの?
指のくっついた足で、歩けるの?
大きくなれても、その見た目から好奇の目にさらされる。
もう分からない。
なにが
なにが
正しい?
これでも母親なら、頑張れ、生きて、と願うのが普通だろうか。
わからない。
その日から病室に、心理カウンセラーの方が来るようになった。
- 1
- 2
KEYWORDS:
産まれてすぐピエロと呼ばれた息子
ピエロの母
本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。
「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」
このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。
陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。
また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。
障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。